現在、妊娠中の方で「おしりが痛い」「痛みで歩けない」と悩んでいる方もいるでしょう。おしりの痛みは、妊娠に伴う体重の増加や子宮が原因といわれています。
この記事では、おしりが痛くて歩けないという方に向けて、痛みの原因や対処法・治し方などを解説します。痛みのレベルや感じ方は、個人差があるため、目安としてご覧ください。
【妊娠中】おしりが痛くて歩けない原因は坐骨神経痛?
妊娠中のおしりの痛みは、坐骨神経痛の可能性があります。坐骨神経痛は、体の中で最も太くて長い坐骨神経が圧迫されたり、刺激を受けたりすることで痛みが現れるのが特徴です。坐骨神経は、腰から足の先まで繋がっているため、おしりだけではなく、腰や太もも・ふくらはぎ・脛・膝の裏側・足先などにも痛みが出ることがあります。
痛みの程度が強いと、歩けなくなる可能性があるため、しっかりと対処することが重要です。また、坐骨神経痛は痛みだけではなく、痺れや冷感・灼熱感・筋肉の張り・締め付けられている感覚などの症状を呈するといわれています。痛みや症状がみられる部位は個人差がありますが、左右のどちらかが痛む方が多く見受けられます。
坐骨神経痛の痛みの程度
坐骨神経痛の痛みの程度は一人ひとり異なり「少し気になる」ほどの痛みから、仰向けになることが困難なほど強い痛みを感じることもあるといわれています。坐骨神経痛の痛みは、以下のような表現する方が多くいます。
- ズキズキ
- ピリピリ
- ビリビリ
- チクチク
- ジンジン
- ツーン
痛みの程度は、特定の体勢で強くなるケースもあるため、何をしているときに痛くなるのかを把握できると対処しやすくなるでしょう。
坐骨神経痛の原因
坐骨神経痛の原因は、以下の6つと考えられています。
- 妊娠に伴う体重の増加
- 子宮の大きさ
- 運動不足
- ホルモンバランス
- 姿勢
- ヘルニアや狭窄症などの疾患
1つずつ見ていきましょう。
妊娠に伴う体重の増加
妊娠中は赤ちゃんや子宮が大きくなるだけではなく、血液量が増加したり、皮下脂肪が蓄えられたりすることから、体重が増加するのが一般的です。体重が増えると重心が前に傾き、腰や骨盤に大きな負荷がかかることから、坐骨神経痛を発症する可能性があるといわれています。
さらに、長時間同じ姿勢で過ごしていると坐骨神経が圧迫されやすくなり、症状が強く出るケースもあるため、休憩をしながら家事や仕事をすることが重要です。
子宮の大きさ
子宮は坐骨神経の近くに位置していることから、子宮が大きくなるにつれて坐骨神経が圧迫され、痛みが出る方もいます。
妊娠初期から後期にかけての子宮の大きさは、以下のとおりです。
妊娠月数 | 子宮の大きさ |
妊娠初期〜妊娠2ヶ月 | ニワトリの卵ほどの大きさ |
妊娠3ヶ月 | 握り拳ほどの大きさ |
妊娠4ヶ月 | 7cm〜15cm |
妊娠5ヶ月 | 12cm〜18cm |
妊娠6ヶ月 | 15cm〜24cm |
妊娠7ヶ月 | 18cm〜28cm |
妊娠8ヶ月 | 22cm〜33cm |
妊娠9ヶ月 | 30cm〜36cm |
妊娠10ヶ月 | 30cm〜36cm |
上記の数値は、恥骨から子宮の上部までの距離を計測した数値となっています。
運動不足
運動不足は筋力の低下を招く要因の1つです。筋力が低下すると、正しい姿勢を維持するのが難しくなり、腰に負担がかかります。その結果、坐骨神経痛を発症する可能性があるといわれています。
妊娠中はつわりや体重の増加により、母体に大きな負担がかかることから、活動量が減りがちです。活動量が減ると、早産や妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病につながる可能性があるため、できる限り体を動かすことが重要です。
ホルモンバランス
妊娠中は、骨盤の靭帯をゆるめて赤ちゃんが産道を通りやすくする「リラキシン」というホルモンが分泌されます。リラキシンにより靭帯がゆるむ際、骨盤周りの坐骨神経が刺激されることから、坐骨神経痛を発症すると考えられています。
姿勢
お腹が大きくなると、バランスを取るために反り腰になる方が多くいます。反り腰は、坐骨神経の近くにある梨状筋が引っ張られ、坐骨神経を圧迫することから、おしりの痛みや痺れを生じるといわれています。妊娠中は無意識に反り腰になりやすいため、正しい姿勢を意識して過ごしましょう。
ヘルニアや狭窄症などの疾患
腰椎部分に以下の疾患を患っている方は、坐骨神経痛になる可能性が高いといわれています。
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰椎すべり症
- 梨状筋症候群
- 仙腸関節炎
- 腰部脊柱管狭窄症
- 変形性腰椎症
- 腰椎分離症 など
坐骨神経痛の症状が辛い場合は、整形外科や産婦人科の医師へ相談しましょう。
妊娠中におしりが痛いときの対処法・治し方
ここからは、妊娠中におしりが痛いときの対処法・治し方を7つ紹介します。
ストレッチをする
おしりに痛みを感じている場合は、筋肉をほぐす効果が期待できるストレッチを取り入れるのがおすすめです。椅子に座ってできるストレッチを紹介します。
【腰のストレッチ】
- 椅子に座り、痛みを感じる方の片足を太ももの上に載せる
- 前方へ体を倒して数秒キープする
- 元の姿勢に戻る
- 数回繰り返す
ストレッチ中に体調が悪化したりお腹の張りがみられた場合は、すぐに中断し休むようにしましょう。
骨盤ベルトを着用する
お腹が大きい方は、腰への負担軽減に効果的な骨盤ベルトを着用するのがおすすめです。骨盤ベルトは産後も使えるため、妊娠中から活用すると良いでしょう。
マッサージをする
おしりの痛みや足の痺れを感じている方は、股関節やお尻のマッサージをすることで、症状が緩和できる可能性があります。テニスボールを使ったマッサージを紹介するので、ぜひ取り入れてみてください。
【テニスボールを使ったマッサージ】
- 後ろに手をついた状態で、膝を立てて座る
- 痛みを感じる部分にテニスボールを置く
- 30秒ほどキープする
おしりの筋肉が張っている方は、ふくらはぎのマッサージを取り入れるのもおすすめです。ふくらはぎは足の血行だけではなく、全身の血行促進にも効果的であるといわれており、筋肉の緊張を和らげるのに役立ちます。
入浴する・温める
入浴やおしりを温めるのは、筋肉の緊張を和らげるのに役立ちます。入浴する際は、38℃〜40℃の温度設定で、10分程度湯船に浸かりましょう。
お尻を温める場合は、蒸しタオルを使ったりカイロを貼ったりするのがおすすめです。体が冷えやすい方は、普段から長めの靴下やレッグウォーマーを履いて足首やふくらはぎの冷えを防止するのが良いとされています。
ツボを押す
おしりに痛みがある場合は、坐骨神経痛におすすめのツボを押すと症状が緩和する可能性があります。気持ち良いと思える強さで、以下のツボを押してみてください。
ツボの名称 | 位置 |
坐骨点 | お尻に力を入れると凹む部分 |
委中 | 両膝の裏側中央 |
承扶 | お尻と太ももの境目の中央部分 |
ツボを押す際は、力を入れすぎると症状が悪化する可能性があるため、優しい力加減で押すようにしましょう。
軽めの運動をする
体調が安定している方は、ウォーキングやヨガなどの有酸素運動を取り入れるのがおすすめです。体を動かすことで、筋肉の緊張を和らげ、坐骨神経痛の症状を軽減できる可能性があります。
妊娠前の運動量が少ない方は、かかりつけの医師に運動をして良いか相談をしましょう。万が一、運動中にお腹の張りを感じた場合は、すぐに運動を辞めて休むことが重要です。
妊婦さん向けの整体に行く
自身でストレッチやマッサージをしても、痛みや痺れなどが改善されない場合は、マタニティ整体に行くのも1つの手です。マタニティ整体は、体のバランスを整えてくれたり、体に負担がかかりにくい姿勢でマッサージをしてくれたりします。
おしりに痛みがあっても避けるべき対処法
妊娠中は、おしりに痛みがあっても独断で湿布を使ったり、市販薬や常備薬を服用したりするのは避ける必要があります。湿布に含まれるインドメタシン・ジクロフェナクナトリウム・ケトプロフェンなどの成分は、赤ちゃんの心臓に影響を与える可能性があります。
医薬品についても、妊娠中の服用は避けた方が良いとされる薬があるため、必ず医師に相談し指示を仰ぐようにしましょう。
坐骨神経痛に関するよくある質問
最後に、坐骨神経痛に関するよくある質問を3つ紹介します。
妊娠初期に見られるおしりの付け根部分の痛みは坐骨神経痛?
坐骨神経はお尻から足先まで繋がっている神経のため、おしりの付け根部分の痛みは坐骨神経痛の可能性があります。痛みが強い場合は、できる限り安静にしましょう。
妊娠中に「坐骨神経痛かも」と思ったら何科を受診すれば良い?
坐骨神経痛の可能性がある場合は、整形外科やペインクリニックを受診するのがおすすめです。かかりつけの産婦人科でも対応してもらえるケースもあるため、主治医に相談してみるのも良いでしょう。
妊娠中に骨盤ベルトはしない方が良い?
骨盤ベルトは骨盤を固定し、腰回りの筋肉の負担を軽減できるといわれています。妊娠中におしりの痛みがある方は、骨盤ベルトを着用することで、痛みが緩和される可能性があります。
まとめ
妊娠中におしりが痛い方や痛みで歩けない方は、坐骨神経痛の可能性があります。坐骨神経痛は坐骨神経が圧迫されたり、刺激を受けたりすることで痛みが現れるのが特徴です。
さらに、坐骨神経は腰から足の先まで繋がっているため、おしりだけではなく、腰や太もも・ふくらはぎ・脛・膝の裏側・足先などにも痛みがみられることがあります。おしりに痛みがある方は、この記事で紹介した対処法を試してみてください。