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31週での出産はどのようなリスクがある?障害や後遺症・生存できる確率などを解説

医師から「妊娠31週でお産になる可能性がある」「切迫早産で自宅安静」などと告げられた場合、大きな不安に襲われる方も少なくありません。31週での出産は正期産ではなく、早産に位置付けられます。妊娠28週〜31週目でお産する方の割合は、全体の0.46%と少ないですが、生存できる確率は高いといわれています。

「31週での出産はどのようなリスクがある?」「赤ちゃんに障害や後遺症が残る可能性は高い?」など、不安や疑問を持つ方もいるでしょう。この記事では、31週での出産のリスクや生存できる確率・障害や後遺症について詳しく解説します。

目次

妊娠31週目の赤ちゃんの大きさと生存できる確率

妊娠31週目の赤ちゃんは、身長が43cm・体重が1,250g〜2,000g程度といわれています。「周産期母子医療センターネットワークデータベース」に掲載されている生存率は、以下のとおりです。

妊娠週数別の生存率はを紹介します。

30週~31週の生存・死亡率割合
生存97.5%
死亡2.5%

次に、出生体重別の生存率を紹介します。

出生体重別の生存・死亡率生存死亡
1,001g~1,250g96.6%3.4%
1,251g~1,500g97.1%2.9%

エコーでの推定体重は±10%程度の誤差が伴うといわれているため、健診時の体重と生まれたときの体重に差が生じる可能性があります。健診時に1,300gといわれていても、出生児に体重が1,200gだった場合は、生存率が多少異なります。

31週で出産した場合の生存率は97%前後ですが、赤ちゃんの身体機能が未熟なことから、お腹の外でも生きられるようNICUに入るケースが多いでしょう。NICUにおける退院の目安は、37週を過ぎた頃もしくは体重が2,000gを超える頃といわれています。

早産児にみられる後遺症・合併症

31週で生まれた赤ちゃんは、早産児として位置付けられます。生存率は高めですが、新生児呼吸切迫症候群や脳室内出血などがみられる可能性があります。ただし、全ての赤ちゃんに後遺症や合併症がみられるわけではなく個人差があるため、参考程度にご覧ください。

ここからは、31週で生まれた赤ちゃんにみられる可能性のある疾患について詳しく解説します。

呼吸器系

31週で生まれた赤ちゃんは、以下の呼吸器系の疾患がみられる可能性があります。

  • 呼吸窮迫症候群
  • 未熟児無呼吸発作
  • 慢性肺疾患

34週未満で生まれた赤ちゃんは肺機能が未発達なうえ、肺胞の膨らみを維持するための肺サーファクタントが十分に産生・分泌されていないことから、呼吸窮迫症候群を発症する可能性があります。呼吸窮迫症候群は、呼吸が速くなったり、息を吸うときに肋骨の間が凹んだりするのが特徴です。

生後数日経つ頃には、肺サーファクタントが分泌される赤ちゃんが多いといわれていますが、気管内挿管や人工肺サーファクタントを投与することもあります。

未熟児無呼吸発作は、呼吸中枢が未熟なために、20秒以上停止したり・徐脈やチアノーゼがみられたりする疾患です。気管内挿管や酸素投与・薬の投与などで治療を行います。

慢性肺疾患は、呼吸窮迫症候群や肺炎などにより酸素投与や人工呼吸器での治療を行った場合にみられる疾患です。肺が損傷を受けることで、人工呼吸管理や酸素投与が必要となる状態を指します。生後28日もしくは修正週数36週の時点で、今後も酸素投与が必要かどうかを判断します。

循環器系

31週で生まれた赤ちゃんにみられる可能性のある循環器系疾患は、以下のとおりです。

  • 未熟児動脈管開存症
  • 心不全

未熟児動脈管開存症は、動脈管が閉じておらず、大動脈に送り出される血液が肺動脈へ逆流している状態です。動脈管は生まれた後、自然に閉じていきますが、早産で生まれた赤ちゃんは動脈管が閉じるまでに時間がかかることから血液が逆流する可能性があります。

未熟児動脈管開存症は、薬剤を使用して治療を行いますが、効果が得られない場合は手術で動脈管を閉鎖します。

心不全は心筋の収縮力が弱く、心拍出量が低下して低血圧や循環不全を起こす疾患です。状態により、昇圧剤や強心剤・血管拡張剤などの薬物治療が必要になることがあります。

消化器系

31週で生まれた赤ちゃんは、以下の消化器系の疾患がみられる可能性があります。

  • 壊死性腸炎
  • 胎便関連性腸閉塞

壊死性腸炎は、腸管の未熟さや低酸素・腸内細菌などが原因で、腸の血流量が低下することにより、組織が炎症を起こしたのち壊死する疾患です。嘔吐や血便・お腹の張りがみられます。壊死性腸炎と診断された場合は、授乳やミルクを中止したり抗菌薬を投与したりして経過を観察しますが、処置をしても症状が進行する場合は手術をする可能性が高いでしょう。

胎便関連性腸閉塞は、便がうまく排泄されずに、腸閉塞を起こす疾患です。悪化すると腸が破れてしまうなど、緊急手術が必要になることもあります。浣腸をして排便を促しますが、腸閉塞が改善されない場合は、外科手術を行うこともあります。

脳・神経系

31週で生まれた赤ちゃんにみられる可能性のある脳・神経系疾患は、以下のとおりです。

  • 脳室内出血
  • 未熟児網膜症 

早産で生まれた赤ちゃんは、脳室付近の上衣下胚層の血管が脆く、出血が起こることがあります。程度は限定的から広範囲までさまざまです。軽度であれば経過観察となりますが、水頭症を続発した場合は手術が必要となります。

未熟児網膜症は、網膜にある血管が通常よりも多く増殖する疾患です。視力障害を引き起こすことが多く、重篤な場合は失明に至る可能性があるといわれています。レーザー治療や注入療法を行っても改善されない場合は、手術をすることが多い傾向にあります。

また、未熟児網膜症を発症した赤ちゃんは、後に弱視や斜視・強い近視・白内障・緑内障などが起こる可能性があることから、長期的な経過観察やケアが必要です。

血液・栄養系

31週で生まれた赤ちゃんは、以下の疾患がみられる可能性があります。

  • 未熟児骨減少症
  • 未熟児貧血
  • 黄疸・ビリルビン脳症

未熟児骨減少症は、体内のカルシウムやリン・ビタミンDが不足することにより、骨の発達が妨げられる疾患です。歯が生えるのが遅くなったり、骨が柔らかく曲がりやすくなったり、身長が伸びにくいなどの症状がみられるのが特徴です。カルシウムやリンを多く含む「母乳添加用粉末」を飲ませるほか、ビタミ Dの服用により不足分を補います。

未熟児貧血は、赤血球を造る機能が未熟な場合や、鉄分の供給が不十分な場合にみられる傾向にあります。赤血球の産生を促すホルモンや鉄剤を投与して治療をするのが一般的です。

新生児黄疸の程度が強い場合は、ビリルビン脳症を呈する可能性があります。「核黄疸」とも呼ばれ、血中に増加したビリルビンという色素が脳に蓄積することにより、脳に障害をもたらすことがあります。

31週で生まれた赤ちゃんの発達と障害について

早産で生まれた赤ちゃんの発達については、個人差があります。出生体重が1,500g以上の場合は1歳頃、出生体重1,250g〜1,500gの赤ちゃんは2歳頃までには、正期産児に追いつくといわれています。

発達について不安や心配なことがある場合は、医療機関に相談するのが良いでしょう。

また、31週で生まれた赤ちゃんは正期産での出産と比べて、自閉症スペクトラムやADHDなどの発達障害のリスクが高いといわれています。これらのリスクは、妊娠週数37週もしくは出生体重が2,500gに近いほど低くなるといわれています。

早産の原因

31週での出産は、早産に位置付けられます。早産の原因として、以下のものが挙げられます。

  • 羊水過多症
  • 羊水過少症
  • 子宮頸管無力症
  • 子宮頸部円錐切除術の既往歴
  • 多胎妊娠
  • 絨毛羊膜炎への感染
  • 妊娠高血圧症候群や前置胎盤などの母体の合併症
  • 喫煙
  • 重労働
  • ストレス

痩せている方も早産になるリスクがあります。痩せ型の方は、妊娠中に12㎏〜15㎏の体重増加が望ましいとされています。

早産の代表的な症状

早産の兆候として、以下の症状が挙げられます。

  • 下腹部の張り
  • 周期的な下腹部痛

上記の症状がみられた場合は、安静にして治るかどうかを確認してみてください。ただし、以下の症状がみられる場合は、すぐに医療機関に連絡を入れ、指示を仰ぐようにしましょう。

  • 安静にしても治らない下腹部痛
  • 周期的もしくは持続的なお腹の張り
  • 性器出血
  • 腰のだるさ
  • おりものの異常
  • 破水

妊婦さんによっては全く症状がなく、妊婦健診時に切迫早産であると診断される方もいます。

早産を予防するためにできること

早産を予防するために、以下のポイントを押さえて過ごすようにしましょう。

  • 休息や睡眠を十分に取る
  • 禁煙する
  • 食事内容に気を付ける
  • 体重が増加しすぎないよう注意する
  • 感染症に注意する
  • 性行為をする際はコンドームを使用する

ただし、気を負い過ぎるとストレスが溜まる可能性があるため、無理せず過ごすことも重要です。

まとめ

31週で出産した場合の生存率は97%ほどですが、赤ちゃんの身体機能が未熟なため、NICUに入るケースが多く見受けられます。また、呼吸器系や循環器系の後遺症や合併症がみられる可能性もあるため、できる限り安静にして過ごすことが重要です。

妊娠週数37週もしくは出生体重が2,500gに近いほど、後遺症や合併症・発達障害のリスクを低減できます。下腹部の張りや周期的な下腹部痛がみられたら、安静にして治るかどうかを確認しましょう。万が一、治らない場合や症状の程度が強くなる場合は、医療機関に連絡を入れて指示を仰ぐと安心です。

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