陣痛がきた後に、かかりつけの病院まで行く移動手段に不安を覚える方もいるでしょう。また「陣痛がきてから出産までの進みが早かったらと心配」「陣痛がきた際に、誰もいないときには救急車を呼んでもいいのか知りたい」という方もいるかと思います。
大量出血や墜落産となる可能性がある場合など、緊急性の高い場合は救急車を呼んだ方が良いとされています。ただし、陣痛だと思っても前駆陣痛である可能性や赤ちゃんが生まれるまでに時間がかかる可能性があることから、救急車は利用せずに病院へ行くのが一般的です。
この記事では、陣痛がきた場合に病院まで行く手段や救急車を呼んだ方が良いケースを解説します。救急車を呼ばないためにできることや妊婦事前登録制度についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
陣痛で救急車を呼んでいい?
陣痛から出産までは初産婦が10時間〜12時間ほど、経産婦が4時間〜6時間ほどかかるといわれています。陣痛時に救急車を利用してはいけないという決まりはありませんが、陣痛が始まってもすぐに赤ちゃんが生まれるわけではないため、救急車を呼ぶ必要はないといえるでしょう。
また、陣痛がきたと思っても痛みが遠のく「前駆陣痛」の可能性もあるため、陣痛の間隔が短くなったり、痛みが強くなったりするかどうかをチェックして、本陣痛かどうかを見極めることも重要です。
陣痛がきた場合に病院まで行く手段
陣痛がきた場合の病院へ行く手段として、自家用車と陣痛タクシーが挙げられます。それぞれ詳しくみていきましょう。
自家用車
病院へ行く手段の1つとして、自家用車が挙げられます。陣痛は痛みの程度が強くなっていくことから、途中で運転ができなくなる可能性があります。そのため、自身で運転するのは避け、家族に運転してもらいましょう。
時間帯や住んでいる地域によっては、道が渋滞する可能性もあることから、前もって病院までの道のりや混雑具合をチェックしておくと安心です。
陣痛タクシー
陣痛タクシーとは、陣痛が始まった妊婦さんをかかりつけの病院まで送り届けてくれるサービスです。一人のときに陣痛がきても、かかりつけの病院までの交通手段が確保できます。
しかし「朝方に陣痛がきて連絡をしたけれど、誰も出社しておらず、対応できないといわれた」ケースや、「出払っていて対応できないと断られた」という方もいます。また、破水時には乗車を断られるところもあるため、前もって複数のタクシー会社をチェックしておくと良いでしょう。
24時間対応してもらえるタクシー会社や、破水時にも乗車できるタクシー会社を選ぶと安心です。
陣痛で救急車を呼んだ方が良いケース
以下に該当する場合は、救急車を呼んだ方が良いとされています。
- 赤ちゃんの頭が見えている場合
- 墜落産となる可能性がある場合
- 大量出血をしている・腹部に激痛が生じている場合
- 頭が締め付けられるような痛みがみられる場合
それぞれのケースを詳しくみていきましょう。
赤ちゃんの頭が見えている場合
赤ちゃんの頭が見えている場合は、子宮口が開大している状態を示しています。すぐにでも生まれそうな状態のため、救急車を要請しましょう。
赤ちゃんの頭が見えているにもかかわらず、お産が進まない場合は、赤ちゃんの心拍が低下したり、酸素不足になったりする可能性があります。いち早く病院へ行く必要があることから、救急車で搬送してもらうと安心です。
墜落産となる可能性がある場合
墜落産とは、分娩の進みが早く、病院に着く前に自宅や車内でお産することを指します。以下のケースでは、墜落産になる可能性があることから、救急車を呼ぶのが良いでしょう。
- 大雪や台風などの自然災害で、タクシーや自家用車で行くのが困難な場合
- 陣痛の間隔が短くなっているのに、渋滞や事故で車が動かない場合
- 前回、お産にかかる時間が短かった経産婦の方
前回、お産にかかる時間が短かった経産婦さんは、さらに速くお産が進む可能性があります。破水と同時にいきみたくなる方もいるため、救急車を呼ぶと安心です。
万が一、救急車が着く前に産まれそうな場合は、以下のように対処しましょう。
- 安全に出産できる場所へ移動する
- 体の下にバスタオルを敷く
- 横向きになって息を吐いて、いきまないようにする
- 赤ちゃんをゆっくり受け止める
- 赤ちゃんの鼻や口を拭いてあげる
- 泣かない場合は赤ちゃんを横向きに寝かせて、背中を下から上にさする
- 部屋や車内を暖かくし、体を拭いてあげる
- 肌と肌が触れ合うように直接抱っこする
- へその緒は切らずに、輪ゴムやひもで結ぶ
墜落産になる可能性がある方は、入院グッズとあわせてバスタオルを数枚用意しておくと安心です。
突然の出血・腹部に激痛が生じている場合
突然の出血や動けないほど痛みが生じているときは、常位胎盤早期剥離を発症している可能性があります。常位胎盤早期剥離は妊娠32週以降に起こることが多く、出産前に胎盤が剥がれることによって生じます。持続する腹痛や子宮壁が硬くなるのが特徴です。
妊産婦死亡原因の2位を占める疾患であり、緊急性が高いため、上記の症状が見受けられる場合は救急車を呼ぶと安心です。
頭が締め付けられるような痛みがみられる場合
頭が締め付けられるような痛みは、妊娠高血圧症候群が重症化した際にみられる脳出血の恐れがあります。重症化した場合は脳出血の他にも、以下の症状がみられます。
- けいれん発作(子癇)
- 肝臓や腎臓の機能障害
- 溶血と血小板減少を伴うHELLP症候群
重症化すると、胎児発育不全や常位胎盤早期剥離・胎児機能不全・胎児死亡などのリスクもあるため、救急車を要請すると良いでしょう。
陣痛で救急車を呼んだときの費用
陣痛で救急車を呼んだときの費用は、原則無料です。ただし、ドクターカーを要請して車内で治療を行った場合や、紹介状が必要な病院へ救急搬送された場合には、別途費用がかかることがあります。
また、自治体によっては、救急車に病院まで搬送してもらった方が入院に至らなかった場合には、選定療養費が発生するところもあります。
陣痛で救急車を呼ぶ前にかかりつけの病院や相談ダイヤルに連絡しよう
本陣痛は、痛みを伴ったお腹の張りが10分以内に規則的に起こる場合と、1時間に6回以上みられる場合と定義されています。病院へ連絡するタイミングは各医療機関ごとに異なるため、前もって貰った書類などで確認しておくと良いでしょう。
緊急性が高いかどうか判断ができない場合は「♯7119」の救急電話相談ダイヤルに電話することで、看護師や医師などから緊急性や受診の必要性などのアドバイスを受けられます。
陣痛で救急車を呼ばないためにできること
「一人のときに陣痛がきたらどうしよう」と不安な方は、計画分娩や計画無痛分娩を検討するのがおすすめです。計画分娩はあらかじめ出産する日を決め、陣痛促進剤を用いて陣痛を誘発し、出産をすることです。
計画分娩はクリニックによって当日出産となる場合と、翌日に出産となる場合があります。前もってかかりつけの病院に確認するのが良いでしょう。計画分娩は家族の仕事の都合や、親族が近くに住んでいないなど、陣痛がきたときに移動手段がない可能性がある方におすすめの分娩方法となっています。
妊婦事前登録制度を活用するのもおすすめ
妊婦事前登録制度とは、各自治体の市役所や消防署に前もって届出と情報提供をしておくことで、緊急と判断されたときに救急車で医療機関に搬送してもらえる制度です。各自治体に住所がある妊婦さんだけではなく、里帰り出産をする方も登録できます。
妊婦事前登録制度の利用の流れは、以下のとおりです。
- 陣痛や破水、強い張り、出血などがみられたらかかりつけの病院へ連絡をする
- かかりつけの病院から119番通報するように指示を受ける
- 119番通報し、救急車を要請する
妊婦事前登録制度は自治体によって呼び方は異なりますが、妊婦事前登録制度を運用している自治体と名称は以下のとおりです。
- 北海道日高町「ママ・サポート119」
- 北竜市「安心出産サポート119」
- 興部町「プレママあんしんサポート119」
- 猿払村「安心出産ママ・サポート119」
- 豊後大野市「きらきら ママ119」
- 国東市「くにさきママサポート119」
- 高梁市「ママ・サポート119」
- 鳴門市「ママ・サポート119」
- 大野市「妊婦情報事前登録制度」
- 南那須地区「マタニティ・サポート119」など
緊急時にスムーズに救急搬送してもらえるため、陣痛がきた際に自家用車がない可能性がある方や、陣痛タクシーを展開しているタクシー会社が近くにない方は、登録しておくと良いでしょう。
まとめ
陣痛時に救急車を利用してはいけないという決まりはありませんが、陣痛が始まってもすぐに赤ちゃんが生まれるわけではありません。陣痛から出産までは初産婦が10時間〜12時間ほど、経産婦が4時間〜6時間ほどかかるといわれているため、救急車は呼ばずに自家用車や陣痛タクシーで病院まで行くようにしましょう。
しかし、赤ちゃんの頭が見えている場合や墜落産となる場合など、緊急性が高い場合には、救急車を要請すると安心です。緊急性が高いかどうかの判断が難しい場合には、かかりつけの病院もしくは「♯7119」の救急電話相談ダイヤルに電話して相談してみてください。
自治体によってはスムーズに救急車での緊急搬送ができるように、妊婦事前登録制度を運用しています。住んでいる自治体や里帰り先の自治体が妊婦事前登録制度を運用しているかどうかを確認し、事前に登録しておくといざというときに安心です。