「無痛分娩を選ぶためにはどんな事前準備がいるのだろう」と疑問に思うことはあるでしょう。無痛分娩を選ぶための事前準備の方法は、自然分娩とほとんど変わりませんが、無痛分娩特有のポイントもしっかり理解していなければいけません。また、分娩本番の流れも知っておくことで、心構えもできるでしょう。
今回は、無痛分娩を選ぶための事前準備や、知っておきたい無痛分娩のメリットとデメリット、そして分娩本番の流れを紹介します。
無痛分娩を選ぶための事前準備
無痛分娩を選ぶための事前準備は、情報収集と家族の理解を得ることです。
無痛分娩にはメリットやデメリットがあり、家族にも理解してもらう必要があります。また、実際に自宅近くに無痛分娩を取り扱う産院があるかも調べることは大切です。
ここでは、無痛分娩を選ぶための事前準備について解説します。
無痛分娩のメリットとデメリットを理解する
無痛分娩には、壮絶な出産の痛みを和らげるという最大のメリットがありますが、デメリットも存在します。そのため、メリットだけでなく、デメリットについてもしっかりと理解をしておきましょう。
無痛分娩は麻酔薬を使った出産方法なので、発生頻度は低いですがどうしてもリスクが伴います。無痛分娩についてしっかり理解して、家族に説明できるようにしておく準備をすると良いでしょう。
自宅近くに無痛分娩を取り扱う産院があるか調べる
出産をする産院は、自宅から通える範囲にあるのが望ましいです。どんなに遠くても、1時間以内で産院に行ける距離が良いでしょう。
出産予定の産院があまりに遠いと、いきなり破水したり、緊急事態になったりした場合に対応が遅くなり、危険な状態になることも考えられます。安全に出産するためには、通える範囲で産院を探しましょう。
家族に相談
無痛分娩を希望しているなら、家族としっかり話し合って相談して決めましょう。無痛分娩は麻酔薬を使用するため、リスクがあることを理解してもらう必要があります。
また、費用も自然分娩より+15〜20万円ほどかかるため、支払いについても確認しておきましょう。
無痛分娩の種類を確認
無痛分娩では、自然に陣痛が来てから産院に行って出産する自然無痛分娩と、予定日を決めて陣痛がなくても入院する計画無痛分娩があります。
多くの産院では担当の麻酔科医の勤務状況から、日中のみの計画無痛分娩のみ取り扱うことが多いです。自分が希望する無痛分娩の種類が可能かも、確認しておくと良いでしょう。
当院では複数の麻酔科医が勤務しているため、24時間いつでも無痛分娩が可能です。そのため、自然分娩に近い流れで行える自然無痛分娩のご希望にもお応えできます。
産院で実際に受診&分娩予約
無痛分娩を選ぶためには実際に産院に行って受診をし、希望に合うなら無痛分娩を予約しましょう。
実際に受診することで、院内の雰囲気などを確認できます。院内見学などを積極的に行っている産院も多いので、気になるなら参加してみると良いでしょう。
分娩予約は早めにしないと、予約できない産院も多いです。妊娠が確認できたら、早めに出産方法の検討をすることをおすすめします。
無痛分娩の主なメリット
無痛分娩のメリットは、痛みの緩和です。また、無痛分娩では出産の痛みを和らげることで体力を温存でき、産後の回復が早い傾向があります。
ここでは、無痛分娩の主なメリットについて紹介します。
出産の痛みの緩和
無痛分娩の最大のメリットは、出産の痛みを和らげることができることです。
ただし、無痛分娩と言われますが、実際には完全に無痛ということではありません。赤ちゃんを押し出すためのいきみのタイミングを測るなどのために、ある程度の痛みを残すように麻酔を調節します。
多少の痛みは残りますが、自然分娩よりはるかに痛みを和らげることができます。
産後の回復が早い
出産自体かなり体力を使います。加えて陣痛の痛みに耐えるだけでも、相当体力を消耗します。
無痛分娩で痛みを和らげることで、体力を温存しておくことが可能です。そのため、産後の回復が早いことが多いです。
無痛分娩の主なデメリット
無痛分娩は麻酔を使うため、自然分娩とは異なるデメリットが存在します。特有のデメリットもしっかり理解して、無痛分娩を選ぶようにしましょう。
ここでは、無痛分娩の主なデメリットについて紹介します。
分娩時間が長引く
無痛分娩は痛みが和らぐ一方、赤ちゃんを押し出すための陣痛が弱くなってしまうため、分娩時間が長引くことが多いです。分娩時間が長引いてしまうと、赤ちゃんに負担がかかってしまいます。そのため、吸引や鉗子などの手技が必要になるケースも多いです。
無痛分娩は自然分娩に比べて吸引になる確率が高いと言われています。吸引や鉗子を行うと、母体や赤ちゃんの頭に傷が付く可能性があります。
副作用や合併症のリスク
無痛分娩は麻酔薬を使用するため、副作用や合併症のリスクがあります。発生頻度が高いと言われているのが、足の感覚が鈍くなってしまうことです。無痛分娩の麻酔は、足の感覚を司る神経に近い所で注入するため、影響を受けやすいと言われています。
他にも、頭痛や発熱、血圧低下などの症状が起きる可能性があります。
無痛分娩を行う産院では安全対策をしっかり行っています。重大な事故になるようなケースは、本当に極まれです。無痛分娩で重篤な症状になることは、とても少ない確率です。しかし、無痛分娩にはリスクがあることは、理解しておく必要があります。
無痛分娩の事前準備と本番の流れ
無痛分娩本番の事前準備と流れを紹介します。
産院によって順序が異なる場合もあるので、詳しくは出産予定の産院に確認してみると良いでしょう。
入院
計画無痛分娩の場合は、予定日の前日や当日の朝に入院します。自然無痛分娩の場合は、陣痛が来たら産院に行きます。
入院後に着替えなどを済ませたら、心電図や血圧計を装着し、赤ちゃんの心拍確認などの状況確認をすることが多いです。また、水分補給のための点滴もし、分娩に向けて準備を開始します。
麻酔を入れるための管(カテーテル)挿入
無痛分娩のための麻酔は硬膜外麻酔といって、背中から管(カテーテル)を挿入して、背骨付近の硬膜外腔というところに麻酔薬を注入します。
腰辺りの背中に局所麻酔をして管を入れますが、この局所麻酔時に少し痛みを感じるでしょう。しかしその後は痛みはほぼ感じず、管の挿入は10分ほどで完了します。挿入した管は固定するので、仰向けで寝ることが可能です。
子宮口を広げる措置
子宮口が開いていないと赤ちゃんが出られないので、子宮口を広げる処置をします。
特に計画無痛分娩の場合は、まだ陣痛が始まっておらず子宮口が開いていないことが多いので、バルーンを入れて膨らませて子宮口を広げます。子宮口を広げる処置は予定日の前日から行う場合もあり、産院によって順序はバラバラです。
陣痛促進剤を投与
分娩が始まったら、人工的に子宮収縮を起こして陣痛をさせるために、陣痛促進剤を投与します。陣痛促進剤は点滴です。陣痛促進剤の効き目が弱い場合は投与量を増やしたり、種類を変えたりして、陣痛が強くなるのを待ちます。
麻酔薬を注入開始
陣痛がある程度強まって子宮口も開いたら、麻酔薬を投与します。麻酔薬を投与するタイミングは産院によって異なるので、確認しておくと良いでしょう。
麻酔薬の投与は事故を防ぐために、量を確認しながら数回に分けて投与します。
当院では、妊婦さん自身が必要なタイミングでボタンを押して、麻酔薬を投与できる装置を導入しています。ボタンを押しすぎて麻酔薬が大量に投入されないように、完全にコントロールしているので安心です。
助産師に従っていきむ
無痛分娩は麻酔が効いているので陣痛が感じにくいため、いきむタイミングが難しいです。そのため、助産師の合図をみて、赤ちゃんを押し出すためにいきみます。
出産
無痛分娩でもある程度の痛みや感覚は残るので、赤ちゃんが出た感覚はわかります。そのため、我が子との初めての対面の感動を、味わえるでしょう。
会陰切開した場合でも、麻酔が効いているので会陰切開部の縫合の痛みもあまり感じずにすみます。
産後
無痛分娩の麻酔が切れるまでは、2時間ぐらいかかります。そのため、産後2時間は分娩室で経過観測のため、安静に待機していなければいけません。
ただ、母親の意識ははっきりしているので、問題がなければ赤ちゃんとのスキンシップなどは行えます。母乳も麻酔薬の影響はないので、その後は自然分娩と同じように授乳を始めたり、赤ちゃんのお世話をしたりして、退院まで母体の回復を確認しつつ過ごします。
まとめ
無痛分娩を選ぶための事前準備は、まずは無痛分娩のメリットとデメリットを理解し、家族にも共有して協力してもらう必要があります。また、無痛分娩を取り扱う産院が近くにあるかも、重要なポイントです。
いざ出産のために無痛分娩を行うときに困らないように、本番の準備や流れについても解説しました。産院によって準備の順序は少し変わるところもありますが、流れはほとんど同じです。
出産の不安を少しでも和らげるため、詳しくは出産予定の産院でしっかり説明してもらうと良いでしょう。