「無痛分娩って種類があるの?何が違うの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
無痛分娩は、自然の流れとほぼ同じ流れで行う自然無痛分娩と、予定日を決めて陣痛がなくても始める計画無痛分娩の2種類があります。赤ちゃんのタイミングである陣痛が始まってから麻酔をかけたいなら、自然無痛分娩が可能な産院を選ぶと良いでしょう。
今回は、無痛分娩の種類と麻酔の種類について詳しく解説します。また、無痛分娩の主なメリットとデメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
無痛分娩は2種類
無痛分娩には自然無痛分娩と計画無痛分娩の2種類があります。しかし、自然の流れに近い状態で出産できる自然無痛分娩が選べる産院は、あまり多くありません。
ここでは、無痛分娩の種類について解説します。
自然無痛分娩
自然無痛分娩は自然分娩と同じように、陣痛が来たら産院に向かって行う出産方法です。
赤ちゃんが出てくるタイミングである陣痛が来るまで通常通り生活するため、いつ出産になるかは予測できません。それでも、自然分娩に近い流れで出産ができるので、無痛分娩でも赤ちゃんのタイミングに合わせた出産をしたいと希望する人には向いているでしょう。
ただし、先に破水してしまい無痛分娩のための麻酔が間に合わないケースもあるので、注意が必要です。
計画無痛分娩
計画無痛分娩は出産予定日を決めてしまい、陣痛が来ていなくても入院して出産する方法です。出産予定日に陣痛がなくても、陣痛促進剤を使って無痛分娩を始めます。
出産予定日の決定は産院によって異なりますが、妊娠37週ぐらいの診察で状況を確認して行います。入院する日が決まっているので、予定を立てやすいのが特徴です。
無痛分娩の種類が選べるか産院に確認
無痛分娩の種類が選べるかは、産院によって異なります。
無痛分娩は麻酔を使うため、産院の麻酔科医の勤務状態などに左右されるためです。そのため、平日の日中しか無痛分娩を行わないなど、産院によって決められています。
もともと産院にいる麻酔科医は少ないため、計画無痛分娩のみを扱う産院が多いです。
自然無痛分娩を希望しているなら、いつ陣痛が起きても対応できる産院を選ぶ必要があります。
無痛分娩と和痛分娩は同じ
無痛分娩と和痛分娩は異なると思われがちですが、どちらも麻酔を使って痛みを和らげる出産方法です。
実際無痛分娩は出産の痛みを完全になくすことはせず、ある程度痛みを残すように麻酔量を調節しています。そのため、産院によっては痛みを和らげることから無痛分娩ではなく和痛分娩と呼ぶことも多いです。
無痛分娩と和痛分娩は同じだと考えてください。
無痛分娩の麻酔の種類
無痛分娩で使用される麻酔の種類は、硬膜外麻酔・脊髄くも膜下併用硬膜外麻酔・点滴による静脈麻酔の3つあります。
その中で海外でも日本でも主流なのが、背中から管(カテーテル)を入れる硬膜外麻酔です。
ここでは、無痛分娩に使われる麻酔の種類について紹介します。
硬膜外麻酔
硬膜外麻酔は海外でも日本でも、一般的に使われる無痛分娩の麻酔方法です。硬膜外麻酔は脊髄辺りの感覚を鈍らせて、痛みが脳に届かないようにする下半身のみの麻酔です。
麻酔方法は脊髄の周りにある硬膜外腔という場所に管(カテーテル)を挿入し、そこから麻酔薬を注入します。管を挿入するのは腰辺りの背中からです。局所麻酔をして管を挿入します。このときの作業時間は約10分程度です。そして麻酔薬を注入し始めて20〜30分で麻酔が効いて、痛みが緩和されます。
硬膜外麻酔は下半身のみの部分麻酔なので、分娩中も母親の意識ははっきりしています。麻酔薬の注入は分娩中ずっと行いますが、酔科医がコントロールしているので必要量以外は注入されません。
当院では妊婦さん本人がボタンを押して自分のタイミングで、麻酔薬を注入できるシステムを採用しています。ボタンを押しすぎて麻酔薬が注入され過ぎてしまうことはありませんので、安心してください。
脊髄くも膜下併用硬膜外麻酔
硬膜外麻酔と併用して、硬膜外腔の奥にある脊髄くも膜下腔という場所に針で麻酔薬を注入する方法です。こちらも下半身のみの部分麻酔です。
脊髄くも膜下麻酔を併用すると麻酔が効き始めるのが1〜2分程度と、かなり早くなります。分娩の進行が速く、すぐに麻酔を効かせたいときには有用な麻酔方法です。
無痛分娩ではあまり一般的ではありませんが、産院に脊髄くも膜下麻酔を使うところもあります。
点滴での静脈麻酔
背中から管を入れる硬膜外麻酔やくも膜下麻酔が難しいと判断された場合は、静脈から点滴で麻酔薬を注入する方法もあります。点滴なので処置はとても簡単ですが、麻酔の効果は硬膜外麻酔より弱いです。
また、母親の脳に麻酔が届いて眠くなったり、呼吸が弱くなったりする場合があります。そして赤ちゃんにも胎盤を通じて、麻酔の影響が少しあると言われています。
点滴での麻酔による無痛分娩を扱う産院は、ほとんどないでしょう。
無痛分娩の麻酔の種類によっての赤ちゃんへの影響
無痛分娩は麻酔を使うため、赤ちゃんに影響しないか心配する人もいるでしょう。
一般的な硬膜外麻酔は赤ちゃんに影響しませんが、点滴だと少し影響がある場合があります。
詳しく解説していきます。
硬膜外麻酔は影響なし
硬膜外麻酔は下半身のみの部分麻酔で、麻酔薬が赤ちゃんに影響することはほとんどありません。
まれに赤ちゃんの心拍状態が悪化して緊急帝王切開になる場合がありますが、麻酔の効果が急すぎることが原因で起こります。そのため、ほとんどの無痛分娩では赤ちゃんに影響を与えることはないです。
また、母乳にも影響しないため、出産後すぐに授乳することも可能です。
点滴での麻酔は影響あり
点滴での静脈からの麻酔は、母親の脳に届き痛みを緩和します。
赤ちゃんの脳にも胎盤を通じて、少量の麻酔薬が届いてしまいます。そのため、母親だけでなく赤ちゃんも眠くなったり、呼吸が弱くなったりする場合があるでしょう。
ただ、麻酔による影響は静脈からの点滴を止めて効果が切れれば、元気な状態に戻ります。
無痛分娩の主なメリット
無痛分娩は壮絶な出産の痛みを緩和できるという最大のメリットがあり、他にも嬉しい効果が見込めます。
ここでは、無痛分娩のメリットについて紹介します。
出産の痛みの緩和
鼻からスイカなどと比喩されるぐらい、出産の痛みは壮絶です。無痛分娩の最大のメリットは、この壮絶な出産の痛みの緩和です。痛みを和らげることで母親のストレスが減り、落ち着いて出産に臨めます。
ただし、無痛分娩は完全に痛みをなくすわけではありません。赤ちゃんを押し出すためにいきむタイミングをつかむために、ある程度陣痛を感じるように麻酔を調節します。
産後の回復が早い
無痛分娩は自然分娩より痛みを感じずに出産することができるので、体力を温存しておくことができます。出産自体かなり体力を使いますが、陣痛などの出産の痛みに耐えるだけでも相当疲労が溜まります。
無痛分娩で出産時に体力を温存しておけば、産後の回復が速くなる傾向があります。
無痛分娩の主なデメリット
無痛分娩のデメリットは陣痛を感じにくくなり、分娩時間が長引くことで、吸引などの処置が必要になる確率が高まります。また、副作用や合併症のリスクもあります。
必要以上に怖がることはありませんが、無痛分娩のデメリットはしっかり理解しておく必要があるでしょう。
吸引や鉗子分娩の確率が高まる
無痛分娩は痛みを感じにくくなるため陣痛を感じにくく、分娩時間が長くなりがちです。
分娩時間が長引き赤ちゃんを押し出すための陣痛が弱くなってしまうと、赤ちゃんに負担がかかってしまいます。そうなると、吸引や鉗子などの手技が必要になるからです。
無痛分娩は自然分娩と比べると、吸引や鉗子を使う確率が高まります。吸引など手技を行うと、母体や赤ちゃんの頭に傷がつく可能性があることを理解しておきましょう。
副作用や合併症のリスク
無痛分娩は麻酔薬を使うため、どうしても副作用や合併症のリスクがあります。
発熱や頭痛、血圧低下などは時々起こるとされているので、そのリスクも考える必要があります。また、重大な事故につながるような合併症を引き起こす可能性も、ゼロではありません。ただし、重篤な状態になるようなことはとてもマレです。
無痛分娩を取り扱う産院は万が一に備えて、必要な機材などを揃えています。また、分娩中も母体の状態を都度確認しながら安全に配慮しています。
重大な事故になることは数少ない事例でしかありませんが、リスクがあることはしっかり理解しておきましょう。
まとめ
無痛分娩には、自然な流れとほぼ同じように出産する自然無痛分娩と、出産予定日を決めて陣痛がなくても行う計画無痛分娩の2種類があります。産院によっては、麻酔科医の勤務状況の関係で計画無痛分娩しか扱わない所もあります。
また、無痛分娩に使われる麻酔も3つほど種類がありますが、一般的に行われるのは背中から管を入れる硬膜外麻酔です。硬膜外麻酔は下半身のみの部分麻酔のため、母親の意識をはっきりしたまま出産します。赤ちゃんへの麻酔の影響もないでしょう。
自分が希望する無痛分娩の種類が選べるかを、出産予定の産院で確認してみてください。
当院では、24時間いつでも無痛分娩に対応が可能です。そのため、自然無痛分娩でも計画無痛分娩でも対応できますので、ぜひ検討してみて下さい。