自然分娩の痛みについて「痛みが苦手で、陣痛に耐えられないのではないか」「自然分娩の痛みはいつまで続くのだろうか」「想像以上に痛いと聞いて不安」という方もいるでしょう。痛みは子宮口が開くにつれて、徐々に強くなるのが一般的です。痛みの感じ方は個人差がありますが、強い痛みを感じる方もいます。
この記事では、自然分娩時の痛みレベルや痛む場所、和らげる方法などを解説します。この記事を読むことで、痛みの目安を把握できるでしょう。
自然分娩での痛みの例え
自然分娩の痛みは、以下のように例えられることが多くあります。
- 生理中の何十倍もの痛み
- 腰の骨が砕かれるような痛み
- 腰を鈍器で殴られたような痛み
- 刃物でお腹の中を掻き回されているような痛み
- 内臓や子宮を雑巾絞りされたような痛み
痛みの感じ方は個人差が大きいため一概には言い切れませんが、予想していたよりも痛いと感じる方も多くいます。
自然分娩の痛みレベル
マギール痛み尺度によると、自然分娩の痛みは骨折よりも痛く、指の切断に近い痛みであると例えられています。出産経験や母親学級などの産前教育の有無によっても痛みのレベルは異なり、産前教育を受けていない方が最も痛みレベルが強いことがわかります。

痛みが苦手な方は、妊娠中に母親学級に参加すると良いでしょう。ここからは、自然分娩と帝王切開・陣痛促進剤を使用した誘発分娩の痛みについて解説します。
自然分娩と帝王切開の痛み
自然分娩は赤ちゃんを産むまでは痛みを感じますが、帝王切開は術後に痛みを感じる方が多くいます。
術中は麻酔が効いているため痛みを感じませんが、麻酔が切れた後に最も痛みが増強し、数日かけて徐々に軽減していくといわれています。また、体を動かすことにより、痛みが増強するケースが多いです。
自然分娩と陣痛促進剤を使用した誘発分娩の痛み
自然分娩と誘発分娩は、陣痛促進剤を使用した方が痛みが強いといわれています。陣痛促進剤を使用した際の痛みの程度を調査した論文によると、初産婦・経産婦ともに陣痛促進剤を使用した方は、子宮口が開大してから赤ちゃんが生まれるまでの期間痛みが強いことがわかりました。
自然分娩は子宮口が開くにつれて徐々に痛みが増していく一方、誘発分娩は陣痛促進剤を投与後、比較的短時間で痛みが強くなるケースが多く見受けられることから、痛みを強く感じやすいといえるでしょう。
【経過別】自然分娩の痛みの程度や痛みを感じる部位
ここからは、お産の経過別に自然分娩の痛みの程度や痛みを感じる部位を紹介します。
出産前
出産前は、お産が近いことを知らせる前駆陣痛が見られる方が多くいます。前駆陣痛は不規則なお腹の張りで「生理痛に近い痛み」と例えられ、子宮が収縮する間隔や持続時間が不規則であるのが特徴です。お腹の張りはしばらくすると、自然に治まることが多くあります。
前駆陣痛がみられた後、数時間で陣痛がくる方もいれば、数日・数週間かかる方もいます。また、前駆陣痛がみられないまま本陣痛がくる方もいるため、個人差が大きいといえるでしょう。
出産時
出産時は、子宮口が開くにつれて痛みが強くなり、子宮口が10cmになる頃が最も痛みが強いといわれています。出産は分娩第1期〜分娩第3期の3つに分けられ、それぞれ痛みの程度と痛みを感じる部位は以下のとおりです。
痛みの程度 | 痛みを感じる部位 | |
分娩第1期のはじめ (子宮口が5cmになるまで) | 弱〜中 | 下腹部・腰 |
分娩第1期のおわり (子宮口が5cm〜10cmになるまで) | 強 | 下腹部・腰・外陰部 |
分娩第2期のはじめ (子宮口が10cmになってから赤ちゃんが生まれるまで) | 強 | 下腹部・腰・外陰部 |
分娩第2期のおわり (赤ちゃんが生まれるとき) | 中※外陰部が最も痛みが強い | 下腹部・腰・外陰部 |
分娩第1期のはじめは、生理痛やお腹をくだしているときのような痛みと感じる方が多い傾向にあります。分娩第1期のおわりから分娩第2期のはじめは、下腹部から外陰部にかけて強い痛みを感じる方が多く「腰が砕かれそう」と例えられることが多いです。
出産後
出産後は、子宮が元の大きさに戻ろうとする後陣痛が見られます。痛みの程度は個人差があり、生理痛のような痛みと例える方もいれば、本陣痛よりも痛いという方もいます。後陣痛は産後2日〜3日目がピークで、その後徐々に治まるといわれているため、退院する頃には落ち着くでしょう。
後陣痛は一般的に、初産婦よりも経産婦の方が痛みの程度が強い傾向にあります。
自然分娩の痛みを和らげる方法
「自然分娩時の痛みをできる限り和らげたい」という方に向けて、自然分娩の痛みを和らげる方法を3つ紹介します。
- リラックスする
- 呼吸を意識する
- 体を温める
それぞれ詳しく説明します。
リラックスする
痛みを和らげる方法の1つ目は、リラックスをすることです。リラックスは、陣痛の痛みを分散するのに効果的といわれています。
痛みにより体に力が入っていると産道の筋肉も硬直し、子宮口が開きにくくなったり、陣痛が弱くなったりする可能性があります。出産時は、できる限りリラックスすることが重要です。アロマを活用するほか、音楽を聴く・マッサージをしてもらうなど、自分がリラックスできる方法を見つけておくと良いでしょう。
呼吸を意識する
痛みを和らげるために、呼吸を意識することも有効とされています。痛みの程度が強くなると、呼吸が浅くなる方が多くいます。陣痛がきたらゆっくりと腹式呼吸をしてみてください。腹式呼吸をする際は、息をゆっくりと吐くようにすると、たくさんの空気を吸うことができます。
腹式呼吸はたくさんの酸素を取り入れられるだけではなく、リラックス効果も期待できます。腹式呼吸を妊娠中から練習しておくと良いでしょう。
体を温める
痛みを和らげる方法の3つ目は、体を温めることです。体を温めることにより、筋肉がほぐれて子宮が収縮しやすくなるといわれています。足を温めたり、カイロや湯たんぽでお腹を温めたりしましょう。
痛みが苦手な方は無痛分娩もおすすめ
痛みが苦手な方は、出産時の痛みを和らげられる無痛分娩を選択するのがおすすめです。下半身に麻酔をかけるため、自然分娩と同じ経験ができます。
しかし、リスクや副作用などもあるため、メリットとデメリットをしっかりと理解したうえで、自然分娩か無痛分娩かを選択するようにしましょう。
ここからは、無痛分娩の痛みの程度やメリット・デメリットについて解説します。
無痛分娩の痛みの程度
無痛分娩は自然分娩の1割〜3割程度、痛みを抑えられるといわれています。無痛分娩はいきむタイミングが把握できるよう、ある程度痛みを残すのが一般的です。痛みの程度には個人差があり、強い痛みを感じる方もいますが、自然分娩よりも痛みを抑えられるため、痛みが苦手な方に最適な方法といえるでしょう。
また、無痛分娩の麻酔は、子宮口が3cm〜5cmに開いたタイミングや陣痛が5分間隔になった頃に投与するのが一般的です。麻酔薬を投与できるまでは、自然分娩と同様に陣痛を経験します。
無痛分娩のメリット
無痛分娩の最大のメリットは、出産時の痛みが軽減されることですが、ほかにも以下のようなメリットがあります。
- 血圧の上昇を抑えられる
- リラックスできる
- 赤ちゃんへの酸素供給量が増加する
- 麻酔が効いているため、縫合時の痛みを感じにくい
- 速やかに帝王切開へ移行ができる
- 産後の体力を温存できる
- 産後の回復が早い
無痛分娩は下半身に麻酔が効いているため、縫合などの処置をする際に痛みを感じにくいのが特徴です。さらに、分娩中に微弱陣痛や回旋異常・分娩停止・胎児機能不全などが生じた場合に、速やかに緊急帝王切開に移行できます。また、血圧の上昇を抑えられるため、妊娠高血圧症候群の方は、重症化を防ぐことが可能です。
無痛分娩のデメリット
無痛分娩のデメリットは、以下のとおりです。
- 麻酔薬のアレルギーがある方や凝固薬を服用している方は受けられない
- 麻酔後に発熱する可能性がある
- 一過性の徐脈がみられる可能性がある
- 分娩時間が長時間にわたる可能性がある
- 吸引分娩や鉗子分娩になる可能性がある
- 足の痺れやめまい、頭痛などの後遺症がみられる可能性がある
麻酔薬のアレルギーを持っている方や抗凝固薬を服用している方・腰椎の手術の既往歴がある方・背骨が極度に湾曲している方・皮下脂肪が多い方は、無痛分娩を希望しても受けられない可能性があります。
無痛分娩は、出産後に熱が出たり後遺症がみられたりする可能性があるため、リスクも踏まえたうえで無痛分娩を検討することが重要です。
まとめ
自然分娩の痛みは「生理中の何十倍もの痛み」「腰を鈍器で殴られたような痛み」「刃物でお腹の中を掻き回されているような痛み」などと例えられます。マギール痛み尺度によると、自然分娩は骨折よりも痛く、指の切断に近い痛みであると例えられており、出産経験や産前教育の有無によっても痛みのレベルが異なります。
自然分娩時は、できる限りリラックスすることが重要です。痛みが苦手な方は、出産時の痛みを1割〜3割程度に抑えられる無痛分娩を選択するのがおすすめです。しかし、無痛分娩はメリットだけではなく、デメリットもあるため、双方を加味したうえで検討するようにしましょう。