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日本と世界各国の無痛分娩の普及率を解説!無痛分娩数が少ない理由とは?

現在、妊娠をしている方の中で「日本では無痛分娩を選択する方の割合はどれくらい?」「世界各国の無痛分娩の普及率が知りたい」という方もいるでしょう。2024年現在、日本よりも世界各国の方が無痛分娩の普及率は高いのが現状です。なぜ、日本では無痛分娩があまり普及していないのでしょうか。

この記事では、日本と世界各国の無痛分娩の割合などを解説します。日本での無痛分娩数が少ない理由も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

目次

日本における無痛分娩の割合

日本産婦人科医会の調査によると、2017年〜2023年までの日本における無痛分娩の割合は7.3%となっています。日本では、無痛分娩よりも帝王切開の割合が高いのが現状です。無痛分娩と帝王切開の件数と割合は、以下のとおりです。


病院の種類
無痛分娩帝王切開
件数割合件数割合
病院3,758件9.4%10,417件27.4%
有床診療所2,430件7.6%4,671件14.7%
出典:厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況

ここからは、2021年〜2023年までの過去3年間の無痛分娩率を詳しく紹介します。

2021年度

日本産婦人科医会の調査によると、2021年度の無痛分娩の割合は、以下のとおりです。

病院の種類無痛分娩の割合
全体7.1%
病院6.6%
有床診療所7.7%
出典:日本産婦人科医会「無痛分娩 産科施設の立場から

2021年度では、病院よりもクリニックなどの有床診療所の方が無痛分娩の割合が高い結果となっています。

2022年度

2022年度の無痛分娩の割合は、以下のとおりです。

病院の種類無痛分娩の割合
全体9.6%
病院9.3%
有床診療所10%
出典:日本産婦人科医会「無痛分娩 産科施設の立場から

2022年度も病院よりも有床診療所における無痛分娩の割合が高く、無痛分娩をした方は10%となっています。

2023年度

2023年度の無痛分娩の割合は、以下のとおりです。

病院の種類無痛分娩の割合
全体11.6%
病院10.6%
有床診療所12.7%
出典:日本産婦人科医会「無痛分娩 産科施設の立場から

2023年度には、病院と有床診療所どちらも無痛分娩の割合が10%を超えています。

世界各国の無痛分娩の割合

次に、世界各国の無痛分娩の割合を見ていきましょう。

無痛分娩の割合
フィンランド89%
フランス82.2%
アメリカ73.1%
ベルギー68%
スウェーデン66.1%
イギリス60%
イスラエル60%
カナダ57.8%
シンガポール50%
韓国40%
ドイツ20〜30%
イタリア20%
中国10%
出典:日本産科麻酔学会「Q19. 海外ではどのくらいの女性が硬膜外無痛分娩を受けているのでしょうか?

アジアよりも、北米やヨーロッパにおいて無痛分娩が盛んに行われており、フィンランドとフランス・アメリカは、無痛分娩の割合が高いことがわかります。

日本での無痛分娩数が少ない理由

日本は世界各国と比較しても無痛分娩の割合が低い国の1つです。無痛分娩数が低い原因は、以下の5つと考えられます。

  • 無痛分娩では愛情が薄くなるという思い込み
  • 無痛分娩は甘えという考え
  • 無痛分娩ができる施設数が少ない
  • 欧米と産科医療システムが異なる
  • 分娩時のリスクがある
  • 無痛分娩費用が自費である

各理由を詳しく見ていきましょう。

無痛分娩では愛情が薄くなるという思い込み

無痛分娩数が少ない理由の1つ目は「無痛分娩では愛情が薄くなるという考え」です。「お腹を痛めて産むことで愛情が深くなる」「お腹を痛めて産むから可愛いと感じられる」と耳にしたことがある方もいるでしょう。無痛分娩は痛みを可能な限り抑えて出産を行うため「愛情が薄くなる」と考える方もいます。

無痛分娩は陣痛が本格的に始まってから麻酔を投与するため、全く痛みがないわけではありません。また、日本では約20%の赤ちゃんが帝王切開で生まれており、全ての方の愛情が薄いとは言い切れません。出産方法や陣痛の有無により愛情の大きさが異なるとは言い難いでしょう。

お産を経験された方の中には、陣痛により体力を消耗してしまい、出産時に「我が子を可愛いと思う余裕がなかった」という方もいます。無痛分娩は出産時の体力の消耗を抑えられるうえ、産後すぐに赤ちゃんに会うことが可能です。無痛分娩では出産時の負担を和らげ、産後の体力の温存ができることから、さまざまなメリットがある分娩方法となっています。

無痛分娩は甘えという考え

無痛分娩数が少ない理由の2つ目は「無痛分娩は甘えである」という風習によるものです。ご家族から「陣痛に耐えてこそ、母親になる資格がある」「赤ちゃんも大変だから痛みを我慢して頑張るべき」と言われる方もいます。マギール痛み尺度によると、分娩時の痛みは骨折よりも痛く、指を切断したときの痛みに近いことがわかります。

出典:第29回周産期学シンポジウム2011|母体・胎児の麻酔

痛みの感じ方には個人差があり、痛みを強く感じる方もいます。無痛分娩は分娩痛も和らげられるため、痛みに弱い方は無痛分娩を選択することで、安心して分娩に挑めるでしょう。無痛分娩を希望する方は、前もってご家族に相談しておくのがおすすめです。

無痛分娩ができる施設数が少ない

無痛分娩により出産をする方は年々増加していますが、対応している施設数が少ないのも普及率が低い理由の1つといえるでしょう。無痛分娩に対応している施設が少ない原因として、医療施設の減少や麻酔科医の不足が挙げられます。

産科のある病院や診療所の施設数は過去5年間で以下のように右肩下がりとなっており、産科を取り扱う病院は88件、診療所は227件減少しています。

出典:日本産婦人科医会「無痛分娩 産科施設の立場から

無痛分娩時は麻酔科医による麻酔の投与が必要ですが、麻酔科医が不足しているのが現状です。麻酔科医が不足している原因として、厚生労働省は手術件数の増加や領域拡大・手術や麻酔への安全性が要求されていることなどを挙げています。

無痛分娩を行える施設数が少なくなっていることから、前もって無痛分娩に対応している施設を探す必要があるといえるでしょう。

欧米と産科医療システムが異なる

日本と欧米の産科医療システムの違いも、無痛分娩数が少ない原因の1つと考えられています。欧米では、産科医と麻酔科医、助産師によるチーム医療が展開されており、出産数の多い分娩施設では専門の麻酔科医が在籍していることが多くあります。

一方で、日本では産科医が麻酔を行うことが多いのが現状です。麻酔科医が不足していたり、麻酔科医が勤務している病院でも手術などに手を取られ、産科の麻酔に関与していなかったりするケースが多く見受けられます。

分娩時のリスクがある

無痛分娩では分娩時だけではなく、麻酔による副作用が見られることがあります。分娩時には、吸引分娩や鉗子分娩、子宮収縮剤を使う頻度が高くなるといわれています。

さらに、麻酔により以下の症状が見られることもあるため、前もってしっかりとリスクを把握しておくことが重要です。

  • 発熱
  • 血圧低下
  • 一過性の徐脈
  • 足に力が入りにくくなる
  • 排尿感を感じにくくなる

無痛分娩を選択するか否かは、メリットだけではなく、リスクも踏まえたうえで検討するようにしましょう。

無痛分娩費用が自費である

無痛分娩費用は、公的な医療保険の対象外であるため自負負担となります。無痛分娩の費用相場は、自然分娩費用プラス10万円〜20万円です。医療保険の適応外であることと、費用が自然分娩よりも高いことから、無痛分娩を選択しない方もいるといえるでしょう。

無痛分娩の費用は病院や診療所によっても異なるため、詳しい金額は各医療機関のホームページを閲覧してみてください。

まとめ

年々増加傾向にある無痛分娩ですが、日本における無痛分娩の割合は7.3%です。欧米は無痛分娩率が高く、50%を超える国が多くあります。日本における無痛分娩数の低さは、過去の風潮や無痛分娩ができる施設数が少ない・自費負担であることなどが挙げられます。

無痛分娩件数は増加傾向にありますが、産科を取り扱う医療期間の数が減少傾向にあるため、無痛分娩を希望する方は、前もって対応している医療機関を探しておきましょう。また、過去の風潮により無痛分娩を反対される方もいるため、ご家族に前もって相談して理解を得ておくことが重要です。

無痛分娩は出産時の痛みを和らげるだけではなく、母体の負担を軽減し、産後の体温を温存できます。しかし、吸引分娩や鉗子分娩となる可能性があり、血圧が低下する恐れもあります。無痛分娩をするか否か悩んでいる方は、メリットだけではなく、リスクも含めたうえで検討するのが良いでしょう。

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