厚生労働省によると、妊娠後期は妊娠28週0日目(妊娠8ヶ月目)からです。妊娠後期に「どのように過ごせば良いのだろう」「過ごし方で気をつけた方が良いことはあるの?」と気になっている方もいるでしょう。
妊娠後期は妊娠期間中のなかで、特に赤ちゃんの成長が顕著になる時期です。お腹が大きくなるにつれて、張りやすくなったり、妊娠線ができたりすることから、前もって対処法を知っておくと安心です。
この記事では、妊娠後期にみられる症状や過ごし方を解説します。妊娠月数ごとの母体と赤ちゃんの大きさについても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
妊娠月数ごとの母体と赤ちゃんの状態
はじめに、妊娠8ヶ月から10ヶ月までの3ヶ月間における母体と赤ちゃんの特徴を解説します。
妊娠8ヶ月目
妊娠28周〜31週までの妊娠8ヶ月目は、子宮の大きさが22cm〜33cmほどになることから、胃が圧迫されて食べ物がつかえている感じがしたり、息切れしやすくなったりする可能性があります。
妊娠8ヶ月ごろの赤ちゃんは、聴覚や味覚・視覚が発達し、肺や内臓などの器官が整う時期であり、赤ちゃんの体重は1,000gほどまで成長するといわれています。
妊娠9ヶ月目
妊娠32週〜35週の妊娠9ヶ月目は、子宮の大きさが30cm〜36cmほどになります。胃がさらに圧迫されることから、つわりのような症状がみられる方がいます。さらに、息切れや動機しやすい時期であり、お腹が張る頻度が高くなるといわれているため、体調の変化に注意が重要です。
妊娠9ヶ月目は、産休が取れる時期でもあります。出産予定日の6週前から産休に入れるため、前もって会社に申告しておきましょう。産休は、出産予定日の6週前から出産日までの「産前休業」と、産後8週目までの「産後休業」に分かれています。出産予定日と出産日にズレが生じた場合は、出産した次の日から産後休業が始まるため覚えておくと良いでしょう。
妊娠9ヶ月ごろの赤ちゃんは、身長が伸びて皮下脂肪がついてふっくらとし始め、目を開いたり閉じたりできる時期であり、体重は2,000gほどになるといわれています。
妊娠10ヶ月目
妊娠36週〜40週の妊娠10ヶ月目は子宮の大きさが36cmほどになりますが、お産に向けて赤ちゃんの頭が骨盤内に下がることから胃の圧迫感が和らぎ、食事を多く食べられるようになるといわれています。しかし、急激な体重の増加は、難産になる可能性があることから、体重が増えすぎないように注意が必要です。
妊娠10ヶ月ごろの赤ちゃんは臓器ができあがり、親指を吸う仕草を行うようになる時期といわれており、体重は3,000gほどになると考えられています。
妊娠後期にみられる症状と対処法
妊娠後期には、以下の症状がみられる可能性があります。
- 尿もれ
- 尿の回数増加
- 足のむくみ
- 吐き気
- 痒み
- 動機
- 息切れ
- めまい
- 立ちくらみ
妊娠後期は子宮が大きくなるため、膀胱が圧迫されることにより、尿の回数が増える方が多くいます。さらに、くしゃみをするときに尿もれするケースも多く見受けられるため、ナプキンや吸水シートを活用すると良いでしょう。
吐き気が強い場合は、1回の食事の量を減らして回数を多くすることで、必要な栄養素を摂取できます。動機や息切れ・めまい・立ちくらみの症状が出た場合は、すぐに休むようにしましょう。
妊娠後期の過ごし方ー日常生活ー
ここからは、妊娠後期における日常生活の過ごし方を紹介します。
お腹の張りがある場合は休む
妊娠後期のお腹の張りが見られた場合は、症状が和らぐまで休むことが重要です。お腹の張りは、生理的なものだけではなく、何らかのトラブルが生じているケースがあります。お腹の張りがみられた場合は、1時間ほど安静にして様子をみてみましょう。
お腹の張りは安静にすると症状が和らぐことが多いですが、改善しない場合やさらに張りが強くなる場合は、何らかのトラブルが生じている可能性があることから医療機関へ相談すると安心です。
妊娠37週未満で、お腹の張りが頻繁に起こる方は、切迫早産になっている可能性があります。お腹の張り以外に、痛みや出血などがみられた場合は医療機関を受診しましょう。
妊娠線のケアをする
赤ちゃんの成長が著しくなる妊娠8ヶ月目以降は、妊娠線ができやすい時期です。妊娠線は「肉割れ」とも呼ばれ、皮膚が引き伸ばされることで起こるといわれています。
妊娠線は産後も残る方が多いため、妊娠後期から保湿やマッサージをしておくと、最小限に抑えられる可能性があります。マッサージをする際は、保湿クリームを手につけて、時計回りもしくは上下に向かって撫でてみてください。
妊娠線はお腹だけではなく、以下の部位にもできる可能性があるため、全身をケアしておくと良いでしょう。
- 二の腕
- 脇の下
- 胸
- お尻
- 足の付け根
- 太もも
なお、妊娠中に現れるお腹の中央部分に真っ直ぐな線は、妊娠線ではなく「正中線」です。一般的に、産後半年から1年ほどで消えるといわれています。
骨盤ベルトを着用する
妊娠後期は、お腹が大きくなるにつれて、骨盤や腰の負担が増加します。さらに、お産に向けて骨盤周りの靭帯が緩んでいくため、腰痛や恥骨痛・坐骨神経痛に悩む方もいます。骨盤周りをベルトで支えることで、症状が和らぐ可能性があることから、骨盤ベルトを着用して過ごすと良いでしょう。
反り腰にならないよう姿勢を意識する
妊娠後期は重心が前になることから、バランスを取ろうとして反り腰になっている方が多くいます。反り腰や腰痛や坐骨神経痛の原因となる可能性があるため、立っているときは顎を引いて胸を張って背筋を伸ばすようにし、座るときは深く腰掛けて背もたれに軽く背中を付けると腰への負担を軽減できます。
また、長時間同じ姿勢でいるのも痛みの原因となる可能性があります。デスクワークや立ち仕事をしている方は、休憩時間にストレッチを行うと良いでしょう。
休息を取る
妊娠後期は、熟睡できなかったり、夜中に何度も目が覚めたりします。さらに、お産への不安や緊張から寝つきが悪い方や、お腹が大きくなるにつれて寝苦しくなったりする方もいます。
寝つきが悪い方は、以下の方法を試してみてください。
- 日中に運動する
- 寝る前のスマートフォンの使用を避ける
- 体を温める
- 深呼吸を繰り返す
上記を日常生活に取り入れることで、眠りやすくなる可能性があります。寝苦しい方は、抱き枕やクッションを活用したり、体の左側を下にして横になったりすると良いでしょう。
妊娠後期の過ごし方ー運動ー
出産は1日以上かかる方もいるため、医師から制限されていない方は、体調が良いときに運動をして体力をつけておくのがおすすめです。妊娠中の運動は、体力の向上以外に以下のメリットも期待できます。
- 肥満防止
- 難産の予防
- ストレス解消
- 妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病の予防
- 便秘解消
- むくみ軽減
- 腰痛の予防
激しい運動は避けて、お腹の張りや体調の変化がみられたらすぐに運動を中止することが重要です。
妊娠後期の過ごし方ー食事ー
妊娠後期は貧血や便秘になりやすいため、鉄分や食物繊維を摂取するようにしましょう。妊娠後期の鉄分推奨量は、1日あたり17.5mg〜21mgとされています。
積極的に、以下の食材を摂取してみてください。
鉄分を多く含む食材 | 100gあたりの鉄分量 |
豚レバー | 13mg |
鶏レバー | 9mg |
赤貝 | 5mg |
牛レバー | 4mg |
牛肉(赤身) | 2.8mg |
めざし | 2.6mg |
砂肝 | 2.5mg |
ほうれん草 | 2mg |
木綿豆腐 | 1.4mg |
牡蠣 | 1.3mg |
あさり | 1.1mg |
卵 | 0.9mg |
妊娠後期は大きくなった子宮によって腸の動きが制限されることから、便秘になりやすい傾向にあります。食物繊維の多い食材と十分な水分を摂取すると、便通が改善される可能性があります。鉄分や食物繊維と併せて、タンパク質やミネラルなどを摂取できるよう食事のバランスを意識しましょう。
妊娠後期にやっておくと良いこと
妊娠後期には、いつ出産になっても大丈夫なように、入院に必要なものを準備したり出産前後の手続きを確認したりしておくようにしましょう。入院グッズはすぐに持ち出せるように、一箇所にまとめて置いておくのがおすすめです。
出産前後に行う手続きとして、以下のものが挙げられます。
手続きの内容 | 提出・手続の期限 | 提出先・手続き場所 |
高額療養費 | 診療を受けた翌月から2年以内(事前認定は出産前) | 役所・協会けんぽ支部・共済組合 |
出産育児一時金 | 妊娠4ヵ月以降、出産翌日から2年以内 | 病院各健康保険の担当窓口・担当部署 |
出生届 | 出産日から14日以内 | 役所 |
乳幼児医療助成券 | 産後すみやかに | 役所 |
児童手当 | 産後すみやかに | 役所 |
健康保険の加入手続き | 産後すみやかに | 役所・勤務先 |
出産手当金 | 産後57日目以降2年以内 | 勤務先 |
育児休業給付金 | 育児休業開始日から4ヶ月以内 | 勤務先 |
児童手当は、出産日の翌日から15日以内に手続きをすると、申請した月から支給されます。赤ちゃんの保険証は入院費用の精算時と1か月健診時に必要となるため、健康保険の加入手続きは産後すみやかに行うようにしましょう。
まとめ
妊娠後期は、赤ちゃんに会える楽しみだけではなく、不安を感じたり緊張したりする時期のため、体調の変化を感じた際は無理をせず休息を取るようにしましょう。
その他にも、妊娠線のケアをしたり、運動したりして過ごすのがおすすめです。食事については鉄分と食物繊維を積極的に摂取してみてください。体調が良いときに、入院グッズを用意し、出産前後に必要な手続きについてチェックしておくと安心です。